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内閣府の日系定住外国人施策に関する基本指針

Shimomura, Roger - Nikkei Story

http://www8.cao.go.jp/teiju/guideline/pdf/fulltext.pdf

日系定住外国人施策に関する基本指針

平成2 2 年8 月3 1 日
日系定住外国人施策推進会議

1.日系定住外国人が置かれている状況と今後の対応

(1)日系定住外国人が置かれている状況

・ 日本人の子孫として我が国と特別な関係にあることに着目してその受入れが認められ、我が国に在留する、ブラジル人、ペルー人を中心とする日系人及びその家族(以下、これらの人々を「日系定住外国人」という。※1)については、当時の経済情勢などもあり、昭和63 年以降、入国が急増し、一定の地域において多数居住することとなった※2。この間、平成2年には「出入国管理及び難民認定法」が改正施行され、これらの人々は現在、同法に定める「定住者」、「日本人の配偶者等」などの身分又は地位に基づく在留資格※3で在留しており、活動に基づく在留資格により入国した者と異なり活動内容に制限はなく、自由に就労できる。
日系定住外国人は、これまでは主として派遣・請負等の雇用形態で製造業などで雇用されており、労働者派遣事業者や請負事業者が生活全般の面倒をみたため、日本語を介した日本社会との関わりを持たなくても生活が可能であった。このため、長期にわたり居住しながら日本語能力が不十分である者も多くみられる。
・ 彼らは、地域経済を支え、活力をもたらす存在として、これまで我が国の経済発展に貢献してきたところであるが、平成20 年秋以降の世界的な経済危機により、従来の形での就労が不可能になり、日本語能力が不十分であることなどから再就職も難しく、生活困難な状況に置かれる者が増加した
・ これに伴い、経済的困窮からブラジル人学校等に通えなくなったことなどにより、不就学の子どもが増加した。
・ 平成20 年末における外国人登録者数について、ブラジル人は31 万2,582人、ペルー人は5万9,723 人となっていたところ、同年秋以降、日本からの出国者総数が日本への入国者総数を上回る傾向にあり、平成21 年末における外国人登録者数は平成20 年末と比較して、ブラジル人で4万5,126人(14.4%)減の26 万7,456 人、ペルー人で2,259 人(3.8%)減の5万7,464 人となったことから、依然として厳しい経済状況の下、就職の見込みのない者など日本での生活を断念する者が相当数帰国したものと見込まれる。一方で、日本に残り続けている者がかなりの数に上っており、日本での暮らしが長期に及んだ者はこのまま定住を希望する傾向にある。

(2)今後の対応

・ 国としては、雇用、教育などの面で緊急の対策を講じているところであるが、こうした状況を踏まえると、単に定住を認めるだけに留まらず、日系定住外国人を日本社会の一員としてしっかりと受け入れていくべきであり、そのための方策を考える必要がある。
・ これまで、日系定住外国人を日本社会の一員として受け入れる体制が完全には整っていなかったことが、今回このような状況を招いたともいえる。
・ 今後もこれらの人々の定住を認める以上、日本社会の一員として受け入れ、社会から排除されないようにするための施策を国の責任として講じていくことが必要である。
・ この点に関し、日系定住外国人が集住する地方自治体は、必要に迫られて、彼らを住民の一員と考え地域に受け入れるための施策を講じてきたところであるが、国に対して、「外国人が日本社会に適応して生活していくために必要になる施策についての国としての体系的・総合的な方針を策定してほしい。」といった要望を行っている。
・ このため、国として、日系定住外国人を日本社会の一員として受け入れるための施策の基本指針を策定し、それを踏まえ取り組むべき施策内容を今後具体化していくこととする。
・ 基本指針に盛り込まれた事項については、各府省庁で検討を行い、平成22 年度末を目途として策定する行動計画に反映させることとする。
・ 行動計画に盛り込まれた事項のうち新たな施策については、外国人に係る住民基本台帳制度のスタート(平成24 年夏を想定)を目処として本格実施を目指すこととする。
・ 行動計画が実行されるまでの間は、「定住外国人支援に関する対策の推進について」(平成21 年4月)に基づく施策を適宜見直しを行いながら着実に実施することとする。

2.日系定住外国人施策の基本的な考え方。

・ 日本語能力が不十分である者が多い日系定住外国人を日本社会の一員としてしっかりと受け入れ、社会から排除されないようにすることが必要である。
日本社会の一員としての受入れを進めるに当たっては、国籍などの異なる人々が、互いの文化的違いを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、日本社会の構成員として共に生きていくという視点が大切である。
・ このための施策を国の責任として講じていくこととし、地方自治体とも連携しながら、これまでの関連施策の成果も活用しつつ、必要な施策を推進することとする。
・ この場合、NPOなどの支援団体とも連携を図ることが重要である。
・ なお、日本に居住する他の外国人も、同様の課題を抱えている場合があると考えられ、日系定住外国人に対して講ずる施策については、可能な限りこれらの他の外国人に対しても施策の対象とすることが望ましい。
・ 日系定住外国人が置かれている状況などを踏まえると、3のとおり、
① 日本語で生活できるために
② 子どもを大切に育てていくために
③ 安定して働くために
④ 社会の中で困ったときのために
⑤ お互いの文化を尊重するためにの5つの分野について対応を考えていくことが重要である。

3.日系定住外国人施策の具体的な方向性

(1)日本語で生活できるために

・ 日本に定住し、日本社会に受け入れられるためには、日本社会におけるコミュニケーション手段である日本語をしっかりと習得することが必要である。
・ 日本語能力が不十分であることにより、子どもの教育、就職、行政や地域社会とのコミュニケーション等日本での生活のあらゆる場面で支障が生ずる。
・ このため、日系定住外国人が日本での生活に必要な日本語を習得するための体制を整備する必要がある。
・ 同時に、日本語の習得に時間がかかる日系定住外国人もいることが想定されることから、多言語による相談体制を整えるとともに、生活に必要な最低限の情報についての多言語化を進める必要がある。

(2)子どもを大切に育てていくために

・ 日系定住外国人の子どもが日本社会の一員として受け入れられていくためには、子どもに対する教育をしっかりと行っていくことが重要であり、そのためにも、保護者に対し「子どもを学校へ通わせる」意識付けを行うことが必要である。
・ 日系定住外国人の子どもの教育を進めるに当たっては、異なる文化に配慮しつつ、日本の公教育を受ける機会を保障することが必要である。一方、将来母国に帰国する場合も想定される等の理由により外国人学校に通う意向にも配慮する必要がある。

(3)安定して働くために

・ 依然として失業率が高水準で推移し厳しい再就職環境にある中で、日系定住外国人の就職を進めるためには、就職に必要な日本語能力や職業能力を向上させることが重要である。
・ 一方、日本語能力が不十分である者に対しては、多言語での就職相談を行うとともに彼らの日本語能力に配慮した職業訓練を行う必要がある。
・ また、引き続き日系定住外国人の就労の適正化を図ることが必要である。

(4)社会の中で困ったときのために

・ 日本語の習得と並行して、日本語習得途上の段階などに配慮して、多言語による生活に必要な情報の提供は必要である。
・ 特に、教育、年金、医療、母子保健、防災・防犯等、生活の中で最低限知らないと不利益となるおそれのある情報については、国と地方自治体が相まって正確な情報提供をできる限り迅速に行うことが必要である。
・ また、日系定住外国人のことを理解し、彼らが困ったときに頼りになるような人材を育成することも必要である。
・ 年金、医療、母子保健といった社会保障などが日系定住外国人もしっかりと受けられるようにするとともに、居住の安定確保が図られることが重要である。

(5)お互いの文化を尊重するために

・ 地域地域によって、日系定住外国人が住んでいる状況は異なるが、いずれにおいても、国籍などが異なる人たちであっても、お互いの文化を尊重しながら、共に生きていくことが重要であり、施策推進に当たってはこの点に留意する。
・ 日系定住外国人のための施策を進めるに当たっては、日系定住外国人自身が日本の文化・慣習を十分に理解することが重要である一方、彼らを日本社会の一員として受け入れることが、将来に向かって社会の活力になること、そのためにはお互いの文化を尊重しながら受け入れていくことが重要であることについて、日本国民の理解を深めていくことが重要である。

4.国として今後取り組む又は検討する施策

<日本語で生活できるために必要な施策>

・ 日系定住外国人に対する日本語教育の総合的な推進体制を整備するとともに、地域の日本語教室や日本語学校等における教育体制の充実を図る。また、日本語教育の標準的カリキュラム・教材や、日本語能力・指導力の評価基準等の策定、日本語教員等の養成・研修のあり方等について検討する。(文部科学省)
・ 日本に入国・在留を希望する日系定住外国人に対して、各種手続の機会を捉えて日本語教育を受けることを促すなど、日本語習得の促進を図るための方策を検討する。(各省庁)

<子どもを大切に育てていくために必要な施策>

・ 日系定住外国人の子どもが不就学にならないよう、また、公立学校において、外国人児童生徒が日本の学校や教育環境に早期に適応できるよう、入学・編入学時の日本語指導の充実や国際理解教育の推進を図るとともに、外国人児童生徒に対する弾力的なカリキュラムの編成など制度面の検討も含め、受入体制の整備を行う。また、外国人児童生徒に対して日本語指導を行う教員の配置の充実や、外国人の子どもや親の相談相手となるような支援員の配置を促進するとともに、現職教員の日本語指導能力の向上を図る。なお、日本語指導に携わる教員の養成について、今後、教員の資質能力向上方策の見直しの中において検討する必要がある。
さらに、小中学校における就業体験などのキャリア教育を推進するとともに、進学を希望する生徒を、定時制・通信制も含め、高等学校へ受け入れるための環境整備を支援する。
このほか、外国人の子どもたちが教育を受ける機会を確保するため、在留期間更新等の審査において就学年齢にある者が不就学であることが判明した場合における、その就学を促進する措置の実施等について検討する。(法務省、文部科学省)
・ ブラジル人学校等の経営を安定させ、充実した教育を提供できるよう、各種学校・準学校法人化を促進するとともに、さまざまな機会において、ブラジル本国政府など関係各国に対し、ブラジル人等の子どもへの支援を要請する。また、ブラジル人学校等に在籍する子どもの公立学校への円滑な受入れを引き続き促進するとともに、日本語教育の機会の充実を図るため、3年間の期限付とされている「虹の架け橋教室」事業について、事業終了後の継続を検討する。(外務省、文部科学省)

<安定して働くために必要な施策>

・ 日系定住外国人の雇用を促進するために、彼らの日本語能力等に配慮した職業訓練など、仕事に必要な日本語の習得などを図る、職業教育、職業訓練等を推進する。(文部科学省、厚生労働省)
・ 日本語能力が不十分である日系定住外国人の円滑な就職を支援するために、彼らの集住する地域を管轄するハローワークにおける通訳・相談員の配置、市町村とも連携したワンストップ相談コーナーの設置、日系定住外国人専門の相談・援助センターの設置による、多言語での就職相談を引き続き実施する。(厚生労働省)
・ 日系定住外国人を雇用するものの責任として、企業や経済団体が日系定住外国人支援に一定の役割を果たすことについて、どのような方策が可能かについて検討する。(内閣府、厚生労働省、経済産業省)
・ 日系定住外国人である労働者が、適正な労働条件及び安全衛生を確保しながら、その有する能力を有効に発揮しつつ就労できる環境が確保されるよう、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」に基づく雇用管理改善指導を実施するなど、就労の適正化のための取組を引き続き推進する。(厚生労働省)

<社会の中で困ったときのために必要な施策>

・ 日系定住外国人に対し、定期健診などの行政サービスを受けることを積極的に働きかけるために、内閣府の「定住外国人施策ポータルサイト」などを通じ、国の統一的な制度(教育、年金、医療、母子保健、子ども手当等)に関する情報の、多言語による地方自治体や日系定住外国人に対する提供を引き続き推進する。(各省庁)
・ 日系定住外国人の居住の安定確保を図るため、公的賃貸住宅を活用するとともに、民間賃貸住宅への入居を支援する。(国土交通省)
・ 日系定住外国人向けの防災対策を進めるため、防災マップやパンフレットの作成支援等により、地方自治体における防災に関する情報の多言語化や日系定住外国人も参加する防災訓練を促進するとともに、外国語による運転免許学科試験実施等の支援、日系定住外国人向けの交通安全教育、日系定住外国人を中心とする自主防犯団体への支援、日系定住外国人が犯罪被害者となることを防止すること等を目的とした防犯教室等の取組を引き続き推進する。(総務省、警察庁)
・ 各種手続の機会を捉えて、日本に関する情報や日本語の基礎についての情報提供を推進する。(各省庁)
・ 日系定住外国人とのコミュニケーションを円滑化し、生活を支援するために、外国語で相談できる体制の整備、人材やNPOの育成を積極的に図る。(各省庁)
・ 日系定住外国人が安心して医療や年金を受けられるよう、外国人を雇用する事業所に対する社会保険への加入促進のための指導、被用者保険の対象となっていない外国人の国民健康保険への加入促進のための取組を通じ、社会保険の適用を促進する。(厚生労働省)

<お互いの文化を尊重するために必要な施策>

・ 「地域における多文化共生推進プラン」の普及を通じ、地方自治体における自主的な多文化共生の取組を促進する。(総務省)
・ 日系定住外国人の社会への受入れの必要性・意義について国民に周知することについて検討する。(内閣府)

※1 国籍はブラジル、ペルーの国籍を有する者に限られず、日系人であることにより、「定住者」、「日本人の配偶者等」などの在留資格で在留する外国人をいう。
※2 日系定住外国人の在留者数自体を表す統計はないが、ブラジル及びペルーの国籍を有する者の外国人登録者数の顕著な上昇は昭和63 年から始まっている。
※3 身分又は地位に基づく在留資格とは、「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」及び「定住者」をいう。